◇
ーーピコンッ。
朝、スマホの通知音で目が覚めた僕は、眠たくて重い瞼を擦りながらベッドサイドに置いてあったスマホに手を伸ばす。
ぼんやりとした視界で画面を覗くと、差出人は、委員長。個人のメールではなく、クラス専用のトークルーム内での話だ。
【今日の日直はきみだよ、ハル。そして花壇の水やりの当番が重なったんだ。謹んで水やりをやるように】
なんてバカげた内容を見て眠気なんか吹っ飛んだ僕は、起き上がって正座をしながらメッセージを送信した。
一緒に誰か手伝って! と。
だがしかし、そのメッセージに返されたものはとんでもなく冷たいものばかりで。
健闘を祈る!とか頑張れ!とか次々とクラスメイトからの通知音の嵐。
困った僕は、親友に頼ることにした。
トークルーム内で「夏樹、助けて」と名指しをすると、すぐに彼からのメッセージが届く。
【ハルの宿命だと思って頑張れ】
わずかな期待さえも打ち砕かれる。
そんな親友からの冷たいメッセージを読んだ僕は、泣く泣く急いで支度をすると学校へ向かったのだった。
◇
走って十五分のところに学校はある。
帰宅部の僕は運動不足のせいで、すでに息が切れそうだった。
「あー疲れたぁ……」
盛大にため息をつきながら教室のドアを開けると、ビクッと驚きながら僕の方へと振り向いた人物がいた。
そして顔を見合わせるとお互い、え、と困惑した声が重なった。
「岩倉さん?! ……が、どうしてこんな早くに……」
僕は、幻覚でも見ているのだろうか。隣の席になれた嬉しさで幻でも見ているのかもしれない。きっとそうだ。うんうん、と一人納得しかけていると、
「私はいつも大体この時間帯に来てるから」
そう告げられて、本物の岩倉さんだと理解すると疲れなんて吹っ飛んだ。
「いつもこの時間?!」
「う、うん」
「まだ僕なんて夢の中……いやそれはさすがに言い過ぎだけど!」
ノリツッコミを自らすると、彼女はクスッと笑った。
やった! 笑ってくれた! まるで何かのゲームのように笑わせたら一ポイント僕の中に加算される。
それにしても知らなかったなぁ。まさかこんな早くに学校に来てるなんて。でも、いいこと聞いた。だってこれから早く学校に行けば毎日岩倉さんに会えるってことだろ。