「ーーいいよ!」
代わりに岩倉さんの大きな声が音楽室に響く。
「……え?」
今、なんて……
僕の聞き間違いとかじゃなくて?
冗談でもなくて?
「ほんとにいいの?」
「う、うん、大丈夫」
もう一度、こくんと首を縦に振った彼女。
「ぅえっ! ほ、ほんと?!」
大丈夫の意味を理解すると、いてもたってもいられなくなった僕は岩倉さんへと詰め寄った。
その距離に驚いた彼女は、大きく一歩下がる。
視線を右へ左へ動かしたあと。
「う、うん…」
両手を束ねて、恥ずかしそうに俯いた。
「岩倉さーー」
「じ、じゃあ、そういうことだから先に教室戻るね!」
僕の言葉を遮って口早にそう告げると、吸い込まれるように開いたままのドアへと消えて行った。
「うそ、まじで……?」
いまだに信じられない僕は、ポカンと固まって、ひらりと床に落ちた紙ヒコーキ。
まさか岩倉さんに承諾されると思っていなかった。だって彼女が普段男子と話している姿なんて見たことなかったから。
ーーつまりそれは勘違いしそうになってもおかしくないわけで。
「っしゃー!!」
誰もいない音楽室で、力強くガッツポーズをしたのだった。