「でもね、ほんとはね……」

 言葉の熱は、秋風の冷たさに攫われる。

「その頃から私……ううん、この絵に出会ったあの日から、ずーっと…」

 言いかけてあの写真を取り出すと、

「私、ハルのこと好きだったんだと思う」

 思いがけない言葉に、僕の視線は彼女へと総浚いされる。
 それはもう驚いて、嬉しさと戸惑いが混在する。

「もうずっと前から、好きで……」

 ああ、やばい。これ以上の幸せはあるのだろうか? ……いいや、ない。きっとこれが幸せって言うんだ。

「僕も」

 今までの小さな欠片が、やがて結晶になり。それに気づいてしまえば最後で。

 僕は、まんまと落ちた。

 不確かなものが確かなものへと変換されたとき、それを見て見ぬふりはできそうになかった。

「僕も、水帆のことが好きだ!」

 ーーきっとこれは、恋だろう。

 それは誰がなんと言おうと、恋に間違いない。


 高校二年の僕たちは、まだまだ子ども。

 だって、〝まだ十七歳〟なのだから。


〝未完成な僕たちは〟自分の言葉で表現するのが下手で失敗ばかり。でも失敗を恐れてばかりでは何もできない。何度失敗したっていい。がむしゃらに走って〝明日を描く〟それが未来への一番の近道だ。


「水帆、僕と付き合って!」
「うん…っ!」


 僕たちの世界は、これからだ。

 これから明るく照らされる。

 きみとならどんな困難だって乗り越えてゆけるだろうーー。