「僕なんて必要じゃない、いらない子、そんなふうに思われてるんじゃないかって思ってた」
「ハル……」
「向き合ってそれを言われるのが怖かった。だから、今までずっと向き合うことができなかった」
よく、十七歳って大人の仲間入りだ、とか聞いたりする。
けれど実際は、まだまだ未完成で自分のやりたいことや思いを真っ直ぐ伝えられない。
親にとって十七歳ってまだまだ子供だ。
「そんなとき水帆が現れたんだよね」
僕の紙ヒコーキを拾ってくれた。
あれが初めてしゃべるきっかけになった。
「水帆が僕の支えになってくれた」
あのときのピアノの音色は、未だに鮮明に頭の中に残っている。
「水帆が僕のために学校休んで一緒に美術大学に行ってくれた」
「そ、それは……」
「自分の過去を打ち明けてまで僕のことを支えてくれた」
「だからそれも……」
そして、もう一つ。
「水帆が夜空の下、手を引っ張ってくれなければ僕はあの場所から一歩も動けなかったと思う」
僕よりも小さな手のひらが力強く感じて、あのときの僕はすごく救われた。
「あれはもう、ただ夢中で……」
あの日の記憶を手繰り寄せたのか、恥ずかしそうに両手で頬を覆った水帆。
人は、どこまで他人のために優しくあれるのか。親切であれるのか。
実際のところ、自分を犠牲にしてまで他人のために優しくなれる人は少ないと思う。
結局はみんな自分が一番可愛くて、自分が一番大切だから。
けれど、水帆は違った。
僕のために優しかった、親切だった。自分の過去を打ち明けてまで僕を支えてくれた。
「うん、でもそれがなければ今頃……ううん、一年後、やりたくもない行きたくもない大学に行って医学部に通ってたと思う」
だって、ずっとそうやって諦めてきたから。今までも。
僕が変わることができたのは。
「だから僕は、水帆がいたから強くなれたんだよ」
「そ、そんなわけないよ……ハルが自分で行動したから……」
「ううん、ほんとに」
親に逆らって逃避行してみたり、無断で学校休んで大学の見学行ったり。一人では絶対にできなかった。
けれど、水帆がいたからこそ。