ふわりと窓から入り込んだ風が僕の頬を撫でるように過ぎ去って、水帆の髪の毛を攫うと心地よく踊った。
もうすぐで十二月がやって来る。
凍るような冬が過ぎると、春が来て僕たちは三年生になる。
進路に向けて大詰めな時期が訪れる。
その前に、自分の進路をちゃんと決めることができて親とも話すことができてよかった。
僕が変わることができたのも諦めないでいられたのも全部。
「水帆のおかげ。ほんとにありがとう」
「ううんっ、そんなことない……!」
溢れていた涙はいつのまにか止まっていて、すんと鼻で息を吸ったあと、でも、と続けると、
「……ハルの力になれたのならよかった」
と、泣いた後の顔で笑った。
それはまるで雨が止んだあとの晴れ間のようで。
僕は嬉しくなってつられて笑った。
水帆が泣くと、不安になる。
でも水帆が笑うと、安心する。
僕と水帆は感情が共有されているみたい。
「ところで、先生にはもう言った……?」
ふいに告げられてハッとすると、あっ! と声を漏らしながら鳩に豆鉄砲を食らったような顔をして。
「すっかり忘れてた!」
「ハル、うっかりしすぎ」
「いや、だって真っ先にーー…」
すんでのところで口をつぐんだ。
真っ先に、誰よりも、一番最初に水帆に伝えたかったんだ。
「ハル?」
「う、ううん! なんでもない!」
僕の口は紙のように軽くて、気を抜けばすぐにしゃべってしまいそうになる。
焦るな、僕。タイミングってものがなによりも大事なんだ。えーっと、とにかく今じゃないわけだから。
「じゃあ先生に言って来るよ!」
これ以上僕の口が余計なことをしゃべらないように言葉を濁す。
「うん、行ってらっしゃい」
そんな僕を送り出してくれる水帆の表情は、太陽のように明るかったんだ。