僕のために泣いてくれた。

 自分のことのように嬉しそうに泣く水帆を見て、僕まで泣きそうになった。

「ありがとう、水帆」

 感謝してもしきれなくて、ありがとう、をもう一度言うと、首を横に振って、

「ハルが頑張った、おかげ…だよ……!」

 と、僕をどこまでも褒めてくれる。

「ううん、水帆のおかげだよ」
「……え?」
「水帆がもう一度ちゃんと話した方がいいって言ってくれたでしょ? あれがなかったら僕、今でも話せないままだったと思うよ」

 親が納得しないまま強引に自分の進路を変更していたと思う。

「そんな、私なんてほんとに…全然…」
「ううん、水帆の言葉に僕はたくさん支えられたんだ」

 それは、揺るぎない事実で。

「ほんとは話したくないことだっただろうけど、僕のために自分の過去打ち明けてくれたでしょ」
「そ、それは……」

 きっと知られたくなかったはず。
だから、元クラスメイトにだって話していなかったはずだろうし。

「僕、それ聞いて水帆の思いを無駄にしちゃいけないって思った。自分のためにも、水帆のためにも、諦めちゃいけないって思った」

「ハル……」
「それに水帆言ってくれたでしょ。話し合わないと思いなんて伝わらないって。確かにその通りだったよ」

 人は言葉を交わさない限り、内に秘めている思いなんて伝わらないーーと。
 ましてや神でもエスパーでもなければ不可能なわけで。

「父さんの考えてたこと、ちゃんと聞いたの初めてだった。まさか父さんがあんなふうに言ってくれるなんて想像もしてなかった」

 父さんの言葉、まだ信じられないくらいだ。

「え、じゃあ……」
「うん。父さんが許してくれたんだよね。なんか、父さんが最初に理解してくれてそれから母さんを説得してくれた感じ? 僕もびっくりしたんだけどね」

 結局今朝は僕が起きた頃にはすでに両親はいなくなっていて、話すことはできなかったけれど。

「まあでも、母さんはまだ納得できてない感じはしたんだよね。だからまだわだかまりはあると思うんだよね」
「そっか……」
「うん。まあ、すぐには無理だと思うけど時間が解決してくれるんじゃないかなって信じてる」

 今は、これでいい。
 きっと母さんにも理解されるときが来ることを願って僕は前に進む。