「人の力になる絵を描きたい……なんてそんな大それたことは思ってないけど、でも……いつかはそうなりたい、そうなれるといいなぁって漠然と思ってる」
思っているだけじゃ夢は叶えられない。
もちろん、それも理解している。
だからこそ、叶えるために僕はどんな努力だって惜しまないだろう。
「……ねえ、ハル」
「ん?」
「やっぱり、もう一度ご両親と向き合ってみたらいいと思う」
「え、なに、まさか水帆まで」
最後の最後に反対されるとは、そう思ってベンチから立ち上がると、
「違うよ! 私はハルの決めたことに賛成だよ!」
矢継ぎ早に現れた言葉に「じゃあ、なんで」と力なく僕が答える。
「ハルのお父さんもしかしたら……」
そうしたら言いにくそうに言葉を濁すから。
「なに?」
僕が急かすと、右に左に視線を揺らしたあと、
「もしかしたらね、何か思っていることがあると思うの。ただ、それを言葉にできてないだけでご理解がないわけじゃないような……そんなふうに思うんだけどね」
父さんが理解がないわけがない?
僕の話を聞いても一言もしゃべらなかった、あの父さんが……?
「どうして水帆はそう思うの?」
「あ、えっと、お母さんがね……」
……お母さん?
「私のお母さんが、そうだったの。私がピアノをやらなくなってからお母さんと少し距離ができて……どこかよそよそしくて、だけど何かを言いたそうな感じで……」
そういえば、この前教えてくれたんだっけ。
「その頃は私に何て声をかければいいか分からなかったって。厳しくしていた手前、ね」
「そっ、か……」
でも、その言い方だと今は関係が回復してきてるってことだよね。
「だからね、もしかしたらハルのお父さんもそうなのかなぁって」
「どうなんだろう。僕の父さんは、厳格で無口なところがあるから……」
一体何を考えているか分からないことがある。