おそらく僕にとっては、いい意見ではないんだろう。

 ゴクリと息を飲んだのが分かった。

「ご両親に祝福してもらえないまま進路を変えちゃっていいのかな。そのあと、わだかまりが残っちゃったりしないかな……」

「わだかまり……それは残るだろうね」
「じゃあ、」
「でも、祝福されるのを待ってたらきっと……ずっと挑戦できない」

 僕は、僕の人生を歩むことができない。これからもずーっとずーっと……だ。

「僕は今までそうやって生きてきたし、これからもそれは続くんだと思ってた」

 暗くて長いトンネルの中、見えない出口をずっと探して、終わりのない人生を送るんだと思っていた。

 ーーけれど。

「あの日大学を見学したとき、思ったんだ。今、やりたいって。今じゃなきゃダメなんだって……そう思ったんだ」

 子どもの頃から聞き分けがよかった僕。
それは、ただ単純に親に迷惑をかけないため、親に反発するのが怖かったから、親の顔色を伺っていたから。全部、僕の行動は親のためにあるようなもので。

 それに。

「水帆、言ってくれたよね。僕の絵を見て、救われたって。光が見えたって」
「……うん」
「嬉しかった、単純に。自分の絵を褒めてもらったのが初めてだったから、言葉に表せないくらいの感情が僕の中に生まれて」

 絵が誰かの支えになったり、救いになったり、希望になったりすることを初めて実感した。