街灯の明かりの下のベンチに二人腰をかける。

「どうだったの……?」

 僕が何も言わない代わりに水帆が最初に口を開いた。

「えっと」

 想像していたはずだった。
親に進路を変更することが認められないはずだと。
 けれど、大学に見学に行ったり先生の言葉を聞いたり支えてくれた水帆だったり、僕は少しだけ勘違いしていた。

 もしかしたら親が許してくれるかもしれない、と心のどこかで期待した。

 でも、結局のところ。

「ダメ……だった」

 僕は、やっぱりうまくいかない。

「父さんは何も言ってくれなかったけど、母さんに話をしても通用しなかった。医者になれの一点張りで……これ以上話しても無駄だと思ったんだ」

 これほどまでに〝無駄〟だという言葉は嫌いだったのに、自分が使う日がくるなんて。

「ハル……じゃあ……」
「でも、諦めたわけじゃないよ!」
「え……」
「親に許してもらえなくても僕、進路変えるつもりだから!」

 話して通用しないなら強制的に動くしかない。

「今までのように黙って言うことを聞いてるつもりはない。僕は、僕の将来を掴み取るためにがむしゃらに動くつもりだよ」

「ハル……」
「せっかく水帆に力になってもらったのに、いい答え見つけられなくてごめんね」
「う、ううん! 私のことはいいの! 全然!」

 そう言ったあと、ただ、と口をつぐんだ。

 そのときの水帆は、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

「ただ、なに?」
「えっと、あのね……これは私の意見だと思って聞き流してもらえる?」

「……うん、分かった」