家に帰って太助と白飛に寛人のことを相談すると、
『そりゃああやかしの匂いがプンプンするな!』
『それにしても、俺たちに挨拶もなく華乃子に求婚なんて、なんて無作法な奴なんだ!』
と言っていた。
『しかし、雪女の郷で華乃子が聞いた声と同じ種類の声だったんだろう? だとしたら同種の可能性がある。あやかしは種族によって使える妖力が違うからな』
成程、それは雪月が自分の力を『雪を操る力』と言ったことで分かる。だとしたら寛人の力は何の力だろう?
『それは俺たち低級のあやかしには分からねーよ。人間の姿を取れるくらいなんだから、力のあるあやかしなんだろう。そいつに直接聞いてみることは出来ないのか』
直接聞いても良いけど、そうなるとその時は華乃子も寛人に対して自分があやかしであることを認めなくてはならない。
……いや、半分あやかしであることは、母の千雪が語ったからそうなんだろうけど。
それに寛人とは会社で顔を合わせるかもしれないし、何より今の仕事をあっせんしてくれた恩人だ。避けるのは礼儀に反する。
「……そうね、聞いてみるわ……」
華乃子はぐっと腹に力を入れて、そう呟いた。しかし思いの外自分の声が頼りなく聞こえて、こんな時に雪月の気持ちを信じられていたら良かったのに、と思った。