裏口の扉が開いたのは、そのときだった。
「おはようございまーす」
背の高い男の子が入ってきた。
「航、遅ーいっ」
紗栄子が駆け寄った長身の男の子に、私は息を呑んだ。
「新しい子来てるよ。今日から入る日浦奈々瀬さん」
言いながら、彼の腕を引っ張って、私の前に連れてきた。
彼は私を見て、動きを止めた。

うそ……。

言葉が出てこなかった。
どうしよう。何か言わなきゃ。黙っていたら変に思われてしまう。
たぶん、満島くんも同じだろう。
「え、なにこの空気。もしかして2人知り合いとか?」
「ああ、高……」
「知りませんっ!」

あ……。

自分でもびっくりするほど大きな声がでた。その一瞬、その場が固った。
「なんだー、びっくりしたぁ」
紗栄子は少し、ホッとしたように笑った。
私は自分の口から出た台詞に呆然とした。
じわりと、心の中に後悔が広がる。

全力で否定してしまった……。
知らない人なんかじゃないのに。