ショックで頭がクラクラした。もしかして、と予想はしていたけれど、どこかで違うかもしれないとも思っていた。
でも、見てしまったら、もう打ち消すこともできなくなる。
私は足を引いて、その場を離れた。こんな状況で、自転車を取りに行ける勇気なんてない。2人が帰るまでどこかで時間をつぶそう。
少し歩いたところにある住宅街の公園に向かった。そんなに広くない児童公園で、人はいなかった。フェンスの周りには茂みがあり、中心に大きな木がある。木をとりまくように、滑り台やブランコなどの遊具が配置されていた。私は木の下のベンチに腰掛けた。
座ってぼうっとしていると、思い出したくもないのにさっきの光景が頭に浮かぶ。背の高い満島くんが、小柄な紗栄子に合わせるように背をかがめて、キスをしていた。
苦しい……。
高校を卒業して、会わなくなれば忘れられると思っていたけれど、全然ダメだった。
顔を見ればすぐに、3年前の楽しかった時間に戻ってしまう。
……まだ、好きなんだ。
こんなに苦しい思いをするなら、最初から変わろうなんて、思わなければよかった。
慣れないことなんて、はじめなければよかった。
頭を伏せて、膝に顔を埋めて泣いた。