それに、もし他に彼女を好きだという男がいれば、なおさら。それがもし、ここにいる浩人だったら? いや、彼はないか。安藤さんは浩人のことが好きなんだろうけれど、彼も安藤さんを好きだと思っているのだとすれば、ここで僕に彼女の家へ行くようけしかけたりしないだろう。
 岡田さんが、僕の目をじっと見つめる。その目が「どっちなの?」と僕を追い込んでくる。

「……分かったよ。今日、僕が行くよ」

 完全に敗北。観念した。それでも、心が踊っているのは僕が男だからだろう。

「それじゃあ、私も一緒に行く」