「知りたそうにしてたから言うけど、この前、美園から連絡があった」
『あ……、そのこと、話したかった』
「めちゃくちゃ柚葵のことを大事に思ってるって、伝わった」
成瀬君の口ぶりから、どんなことを言われたのかは話してくれなさそうな空気を感じる。
私も、深堀はしない方がいいのかなと思い、彼の言葉を静かに待つ。
桐は少し、反省したような顔をしていた。感情のままにぶつかってしまったと。
成瀬君はそれを、どう受け止めてくれたんだろう。
「美園とはもう、仲直りできた?」
『うんっ、ついさっき……って、え、成瀬君はどこまで知ってるの?』
「今、美園の話をしてる柚葵の記憶をたどって全部見た」
『そ、そっか……』
桐とのやりとりを、もう全部知られてしまったんだ。
成瀬君、どう思ったかな。自分のせいで私と桐の仲が悪くなってしまったとか、思っていないといいけれど……。
様子をうかがうようにもう一度成瀬君の目を見つめると、彼は彫刻みたいに美しい顔のまま、何の感情も目に宿していない。
なんだか今日は、いつもと違う。何かあったのかもしれない。
直感的にそう思ったけれど、成瀬君にどこまで踏み込んでいいのか分からない。
「柚葵」
『え……』
ひとりで勝手に考え込んでいると、いつのまにか成瀬君の顔が近づいていた。
まつげが一本一本数えられてしまうほどの距離になり、私は呼吸の仕方を一瞬忘れる。ドクン、ドクン、と胸が飛び跳ねるように心臓が激しく脈打つ。
思わずぎゅっと目を瞑ったけれど、数秒経っても何かが起こることはなかった。
『成瀬君……?』
ゆっくり瞼を開けると、切なそうな顔をした成瀬君は、静かに「ごめん」と謝った。
何に対する、ごめんなんだろう。私は今、キスをされるところだったのだろうか。何も分からなくて、ひたすら疑問符を頭の中に浮かべる。
『成瀬君、もしかして何かあったの……?』
自分の直感に従いそう問いかけると、成瀬君は瞳の中の悲しい色を濃くさせる。それから、少し言いづらそうに、ぽつりと話し始めた。
「柚葵と一緒にいるのは、贖罪かって、美園に言われた」
『え……』
「図星だったから、俺は何も言えなかった」
さっきまでの切なそうな顔とは打って変わって、また感情の読み取れない固い表情に戻っている。
私は動揺したまま、彼の言葉の意味を必死に探す。
『あ……、そのこと、話したかった』
「めちゃくちゃ柚葵のことを大事に思ってるって、伝わった」
成瀬君の口ぶりから、どんなことを言われたのかは話してくれなさそうな空気を感じる。
私も、深堀はしない方がいいのかなと思い、彼の言葉を静かに待つ。
桐は少し、反省したような顔をしていた。感情のままにぶつかってしまったと。
成瀬君はそれを、どう受け止めてくれたんだろう。
「美園とはもう、仲直りできた?」
『うんっ、ついさっき……って、え、成瀬君はどこまで知ってるの?』
「今、美園の話をしてる柚葵の記憶をたどって全部見た」
『そ、そっか……』
桐とのやりとりを、もう全部知られてしまったんだ。
成瀬君、どう思ったかな。自分のせいで私と桐の仲が悪くなってしまったとか、思っていないといいけれど……。
様子をうかがうようにもう一度成瀬君の目を見つめると、彼は彫刻みたいに美しい顔のまま、何の感情も目に宿していない。
なんだか今日は、いつもと違う。何かあったのかもしれない。
直感的にそう思ったけれど、成瀬君にどこまで踏み込んでいいのか分からない。
「柚葵」
『え……』
ひとりで勝手に考え込んでいると、いつのまにか成瀬君の顔が近づいていた。
まつげが一本一本数えられてしまうほどの距離になり、私は呼吸の仕方を一瞬忘れる。ドクン、ドクン、と胸が飛び跳ねるように心臓が激しく脈打つ。
思わずぎゅっと目を瞑ったけれど、数秒経っても何かが起こることはなかった。
『成瀬君……?』
ゆっくり瞼を開けると、切なそうな顔をした成瀬君は、静かに「ごめん」と謝った。
何に対する、ごめんなんだろう。私は今、キスをされるところだったのだろうか。何も分からなくて、ひたすら疑問符を頭の中に浮かべる。
『成瀬君、もしかして何かあったの……?』
自分の直感に従いそう問いかけると、成瀬君は瞳の中の悲しい色を濃くさせる。それから、少し言いづらそうに、ぽつりと話し始めた。
「柚葵と一緒にいるのは、贖罪かって、美園に言われた」
『え……』
「図星だったから、俺は何も言えなかった」
さっきまでの切なそうな顔とは打って変わって、また感情の読み取れない固い表情に戻っている。
私は動揺したまま、彼の言葉の意味を必死に探す。