ハッキリとそう告げると、桐はまた瞳の色を失って、感情をどこにぶつけたらいいのかわからないというように、力なくうなだれる。
 そして、買ってきてくれたお菓子もそのままに、彼女はスッと立ち上がると部屋を出ようとした。
 すぐに手を掴んで引き留めようとしたけれど、桐がついに堪えていた涙を流したのを見てしまい、私は行き場のない手を下におろした。
 そして、桐が小さな声で言い残した言葉を、狼狽しながら聞くことしかできない。
「成瀬のことを許す柚葵を、許せないのって思うのは、どうしてなんだろう……。私、何様だよって話だよね」
 そう、とても苦しそうに言うから、私も思わず泣きそうになってしまった。
 どんな言葉を彼女にかけてあげたらいいのか分からない。
 でも、ただひとつ揺るがないのは、桐も成瀬君も、私にとって大切な人だということだった。
「ごめん。少し頭冷やしてから、また連絡するね」
 バタンとドアが閉まる。自分にとって大切な世界が、またひとつ閉ざされたように感じて、私はその場から動けなくなった。