ぎりぎりで取れた飛行機に乗って、私たち家族は札幌市内にたどり着いた。
すぐに畑に囲まれた祖母の家に向かうと、巴は久々に会う祖父と祖母を前に、はしゃぎまくっていた。
「おばあちゃん、おじいちゃん! 巴でんぐり返しできるんだよ、見てて!」
「あらあ、もうそんなことができるようになったんか、巴ちゃんは」
祖母は巴のわがままにずっと付き添ってくれて、祖父もそんな巴をほほえましく見守っている。
私と両親は、そんな三人を差し置き、朝食を食べ終えた後、ぐったりとソファーに突っ伏していた。
久々の長旅で疲労が溜まったのだろうか、足腰が重い。昨日のお昼ごろについてすぐに寝たにも関わらず、あまり疲れが取れていない気がする。
「柚葵ちゃんは、大学受かったらこっちへ来るかもなんかい?」
『うん、受かったらだけどね』
白髪のパーマが似合っている祖母の言葉に、私は自信なさげにメモを見せる。
祖父と祖母も、私の声が出なくなってしまったことについて知っているけれど、深く聞かないでいてくれている。
「そうかぁ。こっちは寒いけれど、美味いものはたくさんあるから。寂しくなったら来なさい」
『うん、ありがとう。おばあちゃん』
そうお礼を伝えると、今度は丸眼鏡で少し色黒のおじいちゃんが、巴とじゃれあいながら問いかけてきた。
「そういえば、今日はどこか遊びに行くんかい?」
『今日は美術館に行ってくるね』
「そうか。巴ちゃんは見てるから、ゆっくり楽しんで来なさい」
その言葉に、私は笑顔で大きく頷く。
自分には、当たり前のように優しいおじいちゃんとおばあちゃんがいる。
成瀬君は、いったいどんな家族と一緒に、過ごしてきたんだろう。家族は能力のことをどんな風に受け止めてきたんだろう。そして、曾祖父である芳賀先生は、親族の中ではどんな扱いをされていたんだろう……。
自分の環境を俯瞰で見ると、成瀬君に対する色んな疑問が浮かび上がってくる。
それが解決するとは限らないけれど、今はただ、進んでいくしかない。
何かヒントがあるような予感がして、私は美術館へと足を運んだ。
外から見るとただの四角い箱のような、とてもシンプルな建物。この美術館にやってくるのは、もう五回目だ。
チケットの買い方はもう慣れたもので、少し並んでから展示室に進むことができた。
すぐに畑に囲まれた祖母の家に向かうと、巴は久々に会う祖父と祖母を前に、はしゃぎまくっていた。
「おばあちゃん、おじいちゃん! 巴でんぐり返しできるんだよ、見てて!」
「あらあ、もうそんなことができるようになったんか、巴ちゃんは」
祖母は巴のわがままにずっと付き添ってくれて、祖父もそんな巴をほほえましく見守っている。
私と両親は、そんな三人を差し置き、朝食を食べ終えた後、ぐったりとソファーに突っ伏していた。
久々の長旅で疲労が溜まったのだろうか、足腰が重い。昨日のお昼ごろについてすぐに寝たにも関わらず、あまり疲れが取れていない気がする。
「柚葵ちゃんは、大学受かったらこっちへ来るかもなんかい?」
『うん、受かったらだけどね』
白髪のパーマが似合っている祖母の言葉に、私は自信なさげにメモを見せる。
祖父と祖母も、私の声が出なくなってしまったことについて知っているけれど、深く聞かないでいてくれている。
「そうかぁ。こっちは寒いけれど、美味いものはたくさんあるから。寂しくなったら来なさい」
『うん、ありがとう。おばあちゃん』
そうお礼を伝えると、今度は丸眼鏡で少し色黒のおじいちゃんが、巴とじゃれあいながら問いかけてきた。
「そういえば、今日はどこか遊びに行くんかい?」
『今日は美術館に行ってくるね』
「そうか。巴ちゃんは見てるから、ゆっくり楽しんで来なさい」
その言葉に、私は笑顔で大きく頷く。
自分には、当たり前のように優しいおじいちゃんとおばあちゃんがいる。
成瀬君は、いったいどんな家族と一緒に、過ごしてきたんだろう。家族は能力のことをどんな風に受け止めてきたんだろう。そして、曾祖父である芳賀先生は、親族の中ではどんな扱いをされていたんだろう……。
自分の環境を俯瞰で見ると、成瀬君に対する色んな疑問が浮かび上がってくる。
それが解決するとは限らないけれど、今はただ、進んでいくしかない。
何かヒントがあるような予感がして、私は美術館へと足を運んだ。
外から見るとただの四角い箱のような、とてもシンプルな建物。この美術館にやってくるのは、もう五回目だ。
チケットの買い方はもう慣れたもので、少し並んでから展示室に進むことができた。