夏の生ぬるい風が、弱くて脆い私たちの髪を、ふわっと宙へ舞い上がらせる。
 キャンバス上では、描きかけの成瀬君が無表情で遠い世界を眺めている。
 誰にも秘密の、二人きりの夏休みの、出来事だった。