学校内には本当に色んな生徒がいて、私のように大人しい子もいれば、面と向かって悪口を言えてしまうほど気の強い子もいる。
その、気の強い子の代表格とも言える、“美園桐”ちゃんは、学校内では少し浮いていたほどだ。しかし彼女は誰かを傷つける言葉を言うわけではなく、自分の感じたことや思ったことに素直なだけという印象で、実際に話してみると優しい子だった。
私もあんな風に、自分に正直でいられたら……。
そんな羨望のまなざしで、私は桐のことをこっそり見つめていた。
五年生になると、途端に容姿に気を遣う子が増え、クラス内での会話内容も、男子と女子で話すことが随分と変わっていった。
私は、ファッションや恋の話に中々ついていくことができず、ひたすら頷く赤べこ人間と化していく。
「ねぇ見て柚ちゃんー、これママが買ってくれたペンケース。可愛いでしょ」
朝、背負っていたリュックを下ろす前に、クラスいちのおしゃれ女子である亜里沙(ありさ)ちゃんが、バンビとリボンでデザインされたビニール素材のペンケースを見せてきた。
たしかこれは、最近はやっている雑誌によく掲載されているブランドのものだったような……。
「ほんとだ、すごい可愛いね」
「……それ本当に思ってる?」
「え?」
「なんか柚ちゃんって、反応がつまんない」
私の口から反射的に出た言葉は彼女のお気に召さなかったらしく、亜里沙ちゃんはスタスタと別の女の子にペンケースを見せにいく。
他の友人たちは、かなり大げさにリアクションをして、羨ましいという感情を全身で表現していた。
正直言うと、亜里沙ちゃんが思う可愛いと、私の思う可愛いとは少し基準がずれていて、だからあんな風に反応することはできなかったのだ。
ぽつんとした気持ちで、友人たちがペンケースに騒いでいる様子を横目に見ていると、亜里沙ちゃんがちらっとこっちを向いた。
「ねぇ。ずっと思ってたんだけど、なんで柚ちゃんってランドセルじゃなくてリュック使ってるの?」
「え……、あ、これはアメリカで買ったお気に入りで」
「柚ちゃんってやっぱアメリカ人だもんね。だから日本のブランドとか詳しくないんだ」
日本人とか、アメリカ人とか、そういう枠組みは、きっとこの環境ではものすごく大きなことなんだ。私は純日本人だけれど、彼女たちにはそう見えていないんだろう。
その、気の強い子の代表格とも言える、“美園桐”ちゃんは、学校内では少し浮いていたほどだ。しかし彼女は誰かを傷つける言葉を言うわけではなく、自分の感じたことや思ったことに素直なだけという印象で、実際に話してみると優しい子だった。
私もあんな風に、自分に正直でいられたら……。
そんな羨望のまなざしで、私は桐のことをこっそり見つめていた。
五年生になると、途端に容姿に気を遣う子が増え、クラス内での会話内容も、男子と女子で話すことが随分と変わっていった。
私は、ファッションや恋の話に中々ついていくことができず、ひたすら頷く赤べこ人間と化していく。
「ねぇ見て柚ちゃんー、これママが買ってくれたペンケース。可愛いでしょ」
朝、背負っていたリュックを下ろす前に、クラスいちのおしゃれ女子である亜里沙(ありさ)ちゃんが、バンビとリボンでデザインされたビニール素材のペンケースを見せてきた。
たしかこれは、最近はやっている雑誌によく掲載されているブランドのものだったような……。
「ほんとだ、すごい可愛いね」
「……それ本当に思ってる?」
「え?」
「なんか柚ちゃんって、反応がつまんない」
私の口から反射的に出た言葉は彼女のお気に召さなかったらしく、亜里沙ちゃんはスタスタと別の女の子にペンケースを見せにいく。
他の友人たちは、かなり大げさにリアクションをして、羨ましいという感情を全身で表現していた。
正直言うと、亜里沙ちゃんが思う可愛いと、私の思う可愛いとは少し基準がずれていて、だからあんな風に反応することはできなかったのだ。
ぽつんとした気持ちで、友人たちがペンケースに騒いでいる様子を横目に見ていると、亜里沙ちゃんがちらっとこっちを向いた。
「ねぇ。ずっと思ってたんだけど、なんで柚ちゃんってランドセルじゃなくてリュック使ってるの?」
「え……、あ、これはアメリカで買ったお気に入りで」
「柚ちゃんってやっぱアメリカ人だもんね。だから日本のブランドとか詳しくないんだ」
日本人とか、アメリカ人とか、そういう枠組みは、きっとこの環境ではものすごく大きなことなんだ。私は純日本人だけれど、彼女たちにはそう見えていないんだろう。