『掃除が終わったら、タピオカの在庫、他クラスのタピオカ屋にないか聞きに行きたい。成瀬君に、それを手伝って欲しい』
「……わかった」
 どうしてか、成瀬君が少しも自分に自信がないように見えてしまい、気づいたら頼みごとをしていた。想像通り、私に頼みごとをされた成瀬君は、少しほっとしたような表情をした。
 足りない頭を必死に回転させて探した、今自分にできること。でも、ひとりじゃできないこと。
 このまま何もせずに逃げ出すことだけは、自分のためにしたくないと思えたんだ。それは、心が折れる前に、成瀬君が助けてくれたから。
「タピオカの在庫、あるといいな」
 彼の言葉にこくこくと頷く。繋いでいた手は自然と解かれ、水も乾いていた。
 さっき、クラスの半分の人から疑われていたとき、成瀬君だけは、心を読めても読めなくても、信じてくれたのかな。
 そんなおこがましいことを思ってしまうくらい、さっきの言葉が嬉しかったのだ。
 そう思っていることが伝わるのが恥ずかしくて、私はしばらく成瀬君と目を合わせることができなかった。

 私が透けて消えても、見つけ出してくれると彼は言ったけど、成瀬君が消えたいと思った日は、私が見つけてあげたい。私たちは、どこか同じ痛みを抱えている気がするから。
 皆の視線を集める、何もかも正反対な君の隣で、静かにそう、思ったんだ。