私だってそんなことは無理だ。だから、“甘えている”と思う人たちも、決して悪くない。そのことも私は十分に分かっているつもりだ。
 なのにどうして、私はまだこんなことでいちいち傷ついているんだろう。情けない。
 ぎゅっと目を瞑り恥ずかしさに耐えていると、成瀬君が急に、「スマホ貸せ」と言ってきた。
 なんで、スマホ……?
 戸惑っている私から強引にスマホを奪い取り、勝手にSNSのIDを交換する成瀬君。ひたすら焦っていると、スマホがすぐに私のもとへ返された。
 そして、自分の手に戻ってきた瞬間、彼からのメッセージが受信されスマホが震える。こんなに目の前にいるのに、文字で彼の言葉が届く。
『今、どんな気持ち? 南になんて言い返したい?』
 そんなメッセージがぽんぽんと送られてくる。
 私は戸惑いながらも、『とくに何もないです』と返す。
 だって、本当に何もない。私が南さんの立場だったら、私のような人間をどう思うかなんて分からないし、何が正解とかでもない。人の感情は自由だ。
 すると、成瀬君は『思うのは自由だけど、言っちゃダメなことはあるだろ』と返してきた。
 その返事を見て、私はしばし固まる。
 まるで私が思っていることに対しての、返事のようで……。
 メッセージ履歴には『とくに何もないです』としか返していないのに、彼は今いったいどうしてこんな返信をしてきたのだろう。
 スマホを持ちながら、私は成瀬君の美しい顔を見つめる。
 彼は、自分の膝に顎を乗せて、私のことを上目遣いで見つめている。何かを……探るみたいに。
 それから数秒、間を置いて、信じられないメッセージが送られてきた。
 『俺、人の心読めるんだ』。
 人の心が、読める……?
 すぐには全く受け止めきれない情報を前にすると、人の頭の中は、本当に真っ白になる。
 目を丸くして驚いている私を見つめたまま、成瀬君は眉ひとつ動かしていない。
 その表情を見て、嘘や冗談を言っているわけではないことを、私は一瞬にして悟った。
 ――これは“冗談”ではない。
 それだけは、すぐに分かることができた。