「柚葵、時間大丈夫? もう桐ちゃん来ちゃうんじゃない? 今日は途中の駅から一緒に行くんでしょ?」
「あ! そうだった!」
 最近彼女の予備校が忙しくて会えない日々を送っていたので、今日は乗る車両を合わせて、学校に着くまで話そうということになったのだった。
 私は食べ物を牛乳で流し込み、鏡の前でちょんちょんと髪の毛を整えてから、すぐにリュックを背負う。
「柚ねぇ、走って転ばないでよねぇ。はい、マフラー」
「巴、ありがとうね。いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
 巴と母親に見送られて、私は十二月の冷たい空気の中、駅に向かって小走りをする。
 白い吐息がクラゲのように空に浮かんでは、形をなくしてすぐに消えていく。
 ふとまつげに綿毛のようなものが飛んできて、私は空を見上げた。
 雪だ……。まだ十二月に入ったばかりだというのに、関東圏でも雪が降るだなんて。
 曇った銀色の空をしばらく見上げながら、空から舞い降りてくる白い綿雪を手のひらに取ってみる。それは、すぐに手の温かさで水になってしまったけれど、とても儚く美しかった。一面に雪が積もったら、巴がすごくはしゃぎそうだな。
 私はリュックから折りたたみ傘を取り出すと、走って駅に向かった。

「柚葵、おはよう。よく間に合ったね」
 小学生のころからの友人、桐にそう言われて、私は息を整えながら笑顔を向ける。桐の家は私の最寄り駅から三駅前にあるので、彼女が先に電車に乗っていた。
 第三車両で、と約束した通りに出会うことができ、私はひとまずほっと胸をなでおろす。
 桐は単語帳をバッグの中にしまうと、私の髪についた何かを取ってくれた。
「あれ、雪降ってたの?」
 驚いたような桐の言葉に、私はほら、と窓の外を指さす。さっきよりも激しくなった雪が、少しずつ外の世界を白く染めあげている。
 桐は驚いたように窓の外を見て「本当だ」とつぶやく。あまり雪が降らない地域なのに、この時期に雪が降るなんて珍しい。雪の予報なんて出ていなかったのに。
「なんか景色見てたら余計寒くなってきたー」
 桐の言葉に、私はふふっと笑みを返す。
 景色を眺めながら他愛もない会話をしていると、あっという間に最寄り駅に電車がついてしまった。
 桐の高校はここから五駅は先にあるので、彼女とはここでサヨナラだ。
「じゃあね柚葵、また明日」