■君のいない日々 side志倉柚葵&成瀬慧
side志倉柚葵
夢を見た。眼鏡をかけた小学生くらいの男の子と、一緒に駆けっこをして遊ぶ夢。
彼は風のように草原を走り回り、私が追い付けないほどの速度で光へ向かって走っていく。
私が転んだのを見ると、彼はそっと優しく手を差し伸べてくれた。
夢の中の私は自由に声を出せていて、「ありがとう」と元気よく返してから、その優しい手にそっと指を重ねる。
すると、彼は何か光の玉のようなものを私の口元に持ってきた。それが何か分からないのに、私はその玉を飴玉のように自然に飲み込む。すると、たちまち喉が熱くなり、体が発光し始めたのだ。
驚き顔をあげたけれど、その少年の顔は逆光でよく見えなかった。
口パクで「ようやく返せた」と言われた気がした。
ピピピピ、という単調な音で目が覚めた。
私はベッドの上でぼんやりと目を開けると、カーテンから漏れる眩しい朝日に目を細める。
不思議な夢を見た気がする。目元に指で触れると、涙が出ていたことに気づいた。ここ最近はずっとこの状態が続いているので、とくに動揺することなく涙を雑に払う。
「柚ねぇっ、朝だよー!」
「わっ、びっくりした」
いつの間にか部屋に入っていた妹が、ばふっと私の布団にダイブしてきた。小さくて可愛い妹の頭を、私は微笑ましい気持ちでよしよしと撫でると、妹は嬉しそうに笑う。
「今日はワッフルだって! 早く行こうよー」
「ほんとだ、甘い匂いがするね。ちょっと待ってね」
私はよいしょと重たい布団をどけてベッドから出ると、巴に引っ張られるがままに一階へと向かう。
少しだけ身支度を整えてからリビングへ向かうと、お皿にサラダとワッフルが盛り付けられていた。
巴がずっとほしいほしいと言っていたワッフルメーカーが、ようやく日の目をみたというわけだ。これを朝から焼いてくれた母には頭が下がる。
「巴、柚葵、おはよう。メープルシロップ適当にかけて食べて」
「わーい、いただきます。巴、これかけて食べてねだって」
巴の分にシロップをかけてあげてから、私は熱々のワッフルを頬張った。外側はカリッと、中はしっとりふんわりとした仕上がりになっていて、それだけで幸せな気持ちになる。
巴と一緒に夢中で食べていると、あっという間に家を出なくてはならない時間になっていた。
side志倉柚葵
夢を見た。眼鏡をかけた小学生くらいの男の子と、一緒に駆けっこをして遊ぶ夢。
彼は風のように草原を走り回り、私が追い付けないほどの速度で光へ向かって走っていく。
私が転んだのを見ると、彼はそっと優しく手を差し伸べてくれた。
夢の中の私は自由に声を出せていて、「ありがとう」と元気よく返してから、その優しい手にそっと指を重ねる。
すると、彼は何か光の玉のようなものを私の口元に持ってきた。それが何か分からないのに、私はその玉を飴玉のように自然に飲み込む。すると、たちまち喉が熱くなり、体が発光し始めたのだ。
驚き顔をあげたけれど、その少年の顔は逆光でよく見えなかった。
口パクで「ようやく返せた」と言われた気がした。
ピピピピ、という単調な音で目が覚めた。
私はベッドの上でぼんやりと目を開けると、カーテンから漏れる眩しい朝日に目を細める。
不思議な夢を見た気がする。目元に指で触れると、涙が出ていたことに気づいた。ここ最近はずっとこの状態が続いているので、とくに動揺することなく涙を雑に払う。
「柚ねぇっ、朝だよー!」
「わっ、びっくりした」
いつの間にか部屋に入っていた妹が、ばふっと私の布団にダイブしてきた。小さくて可愛い妹の頭を、私は微笑ましい気持ちでよしよしと撫でると、妹は嬉しそうに笑う。
「今日はワッフルだって! 早く行こうよー」
「ほんとだ、甘い匂いがするね。ちょっと待ってね」
私はよいしょと重たい布団をどけてベッドから出ると、巴に引っ張られるがままに一階へと向かう。
少しだけ身支度を整えてからリビングへ向かうと、お皿にサラダとワッフルが盛り付けられていた。
巴がずっとほしいほしいと言っていたワッフルメーカーが、ようやく日の目をみたというわけだ。これを朝から焼いてくれた母には頭が下がる。
「巴、柚葵、おはよう。メープルシロップ適当にかけて食べて」
「わーい、いただきます。巴、これかけて食べてねだって」
巴の分にシロップをかけてあげてから、私は熱々のワッフルを頬張った。外側はカリッと、中はしっとりふんわりとした仕上がりになっていて、それだけで幸せな気持ちになる。
巴と一緒に夢中で食べていると、あっという間に家を出なくてはならない時間になっていた。