机に置かれたパンフレットには、ここから遠く離れた北の国の高校が載っている。
 真っ白な雪原に囲まれて、生まれ変われたらいいのにと思った。
 
 もし、北海道で、美大生になった柚葵とすれ違うことがあったとしても、俺は声をかけられない。柚葵も俺に気づかない。
 切なさも悲しみも虚しさも全部全部、雪が溶かしてくれたらいいのに。なんて、ありえないことを願うことしか、今の俺にはできなかった。
 悲しみも全部ひとりで、飲み込まなくてはいけない。柚葵と学校で会ってしまうまでに。