朝、またいつも通りに起きる。

 だがいつもと違うのは少し倦怠感を覚えているところだ。

 やはり、徹夜は体によくないと思った。

 体にまだ疲れが残っているし、動くのが憂鬱(ゆううつ)になる。

 朝ご飯は今日はトーストだ。

 あくびを噛み殺しながら、僕はパンにイチゴジャムを塗り、オーブントースターに投入。

 それから、冷蔵庫から牛乳を取り出して、コップに注ぐ。

 朝、アカ姉や母さんがご飯を用意していない時は基本これを食べている。

 昔、コーンフレークに流行っていた時期があったが、やっぱりトーストが一番だと思い、ずっとこれを食べている。

 サクサクとパンをかじる音が部屋を支配する。

 居たたまれなくなって、テレビをつけて、音を出す。

 こうなってしまったのは、きっと人と関わり、無音が少ない状況を味わったからだろう。

 別に悪いことじゃないし、むしろそれが普通なんだろう。

 今ごろになって、自分の変化が怖くなっているのかもしれない。

 だが、今の僕にはそんな事を考えている暇はない。

 今日は夏休み明けのテストの日だ。

 歯を磨いて、制服を着て身だしなみを整えてから、少し早めに学校へ向かう。

 僕は普段の登校で、始業のチャイムを余裕を持って間に合うくらいなのだが、それでも人は少なく教室に数人程度だ。

 だが、今日は始業30分前にも関わらず、大勢の生徒がいた。

 自転車置き場もこの時間なら、ほとんどスカスカな状態なのにびっちりと埋まっていた。
 皆、勉強の意欲はあるようだ。

 このテストの日程だが、休み時間が短縮され、通常が10分のところ、5分になり、試験時間は40分間。

 ので、普段より早く帰ることができ、僕は去年読書の時間に当てていた。

 今年はどうなるのか知らないが、きっと誰かと遊びにいけると思うのだ。

 もう、僕にとって誰かと行動をするということが当たり前になってきた。

 僕は、教室に行き、自席に座る。

 飯島さんはまだ来ていなかった。

 現代社会と科学の単語を暗記するために、手製の単語帳を見ながら、ルーズリーフにひたすら書く。

 たまに、読んで覚えれる人や見るだけで覚えれる人がいるが、こんな人前で読むのは論外、見るだけで覚えれるなら苦労しない。

 テスト範囲の単語を三周ほど書いただろうか。

 いつの間にか始業5分前になっており、飯島さんも丁度始業5分前のチャイムが鳴ったと同時に来た。

「おはよう」

「おはよう不知くん! 今日テストだねっ!」

「そうだね。頑張ろう」

 挨拶だけを交わすと、飯島さんは椅子に座ってテストの準備をしだした。

 普段なら、クラスメイトの女の子や坂本さんや神田さんと会話をしていたから。

 こういう時は真面目なんだなと思った。

「どうしたの?」

 飯島さんの事をジロジロと見すぎてしまった。

 彼女は、少し恥ずかしそうにしてこちらを見ている。

「いや、なにもないよ。真面目だなって思って」

「前に学年トップ取るって話したでしょ?」

 たしか僕が初めてノリを覚えて実行した日に、そんな話をしていた気がする。

「絶対に取りたいんだよね」

 飯島さんの瞳には、闘志が宿っているような気がした。

「不知くんも取るでしょ?」

 そりゃ、僕だって出来れば取りたい。

 だけど、それなりの努力はしていない。

 普通に頑張ってるだけじゃきっと無理なんだろう。

 飯島さんのメイクが普段はほとんどしていないようなナチュラルメイクなのに、それが濃いのはきっと寝不足でクマが出来ているからだろう。

 重ねて言うが僕はそんなに努力はしていない。

 普通に小説を読む前に一時間ほどさらっとやっておくか程度だし、昨夜以外はいつも通りに23時以内には寝ていた。

 だから、きっと無理だとは思う。

 でも、飯島さんの前では、余裕な態度で居たかった。

「うん。頑張って取るよ」

 とだけ言うと始業のチャイムが鳴った。

 僕らの担任である松本先生がテストを受けるに至ってのルールや注意点を説明。

 中学の頃となにひとつ変わらないルールだから、言わなくてもいいのでは? と時々思ってしまう。

「えー、説明は以上になります。ですが皆さん、もう高校二年生です。進路を決める大切な第一歩となりますので、気を引き締めて試験を受けてくださいね」

 先生はそれだけを言い、質問を受け付けた後、国語の回答用紙と問題用紙を配布して、テスト開始のチャイムが鳴るまで待機をしていた。

 そうして、チャイムが鳴り、テストが始まった。

 国語は大丈夫だが、他の教科は飯島さんに教わったことを思い出して頑張ろうと誓ったのだった。