一昨日とは打って変わった秋晴れの中、俺と岡本はショッピングモールに来ていた。休日のショッピングモールは多くの人で賑わっており、待ち合わせでよく使われるここ中央時計台においても、家族連れやらカップルと思しき人たちでごった返していた。
「めっちゃ人いるな」
「ああ、そうだな」
岡本の言葉に相槌を返しつつ彼の方に目を向けると、岡本は落ち着かない様子であたりを見渡していた。
「いや、約束の時間までまだあるぞ?」
「そ、そうなんだけど……なんか、落ち着かなくて」
声もさっきより上擦っていて、こいつ大丈夫かな、と心配になった。
勉強やスポーツはそつなくこなす岡本だが、恋愛のこととなるとダメみたいだった。一瞬、昔の彼の影がちらついたが、俺自身もそんなに経験はないので似たようなものかもしれない、と思い直す。
「とりあえず、気分転換にぶらぶらしてみようぜ」
約束までまだ時間があることをもう一度確認し、俺は岡本を促した。
「お、おう」
岡本は心を落ち着かせるようにひとつ息を吐くと、メインストリートの方へと歩き出す。その拍子に、午前中に買った仲直りのためのプレゼントが入った紙袋がカサリと揺れた。
夏生が提案した約束の時間まで、あと一時間ほど。
それくらいあれば、岡本も落ち着いて佐原さんと話せるようになるだろう……多分。
前を歩く岡本の背中を見つめながら、俺は先日の夏生の提案を思い出す。
提案内容は至って単純。夏生が佐原さんを買い物に誘い、午後二時頃に中央時計台の前を通るから偶然を装って会い、そのままそこで仲直りする、というものだ。
本来なら、自分から会って仲直りをするべきかもしれない。しかし岡本が言うところによると、電話やメールには反応がなく、学校で会っても避けられ、とにかく話しかけられるような感じではないらしい。恋愛に奥手という岡本の性格も相まって、どうにかきっかけを作ろうと思案した結果、夏生が提案してきたのがこれだった。
「いきなりその場で仲直り、か。大丈夫かな」
しばらくお互い冷静になるよう期間を空けるのも手だと思ったが、自然消滅を岡本が恐れていたことと、すぐに仲直りしたほうがいいという夏生の勢いに押し切られた。他にもいろいろと言いたいことはあったが、あの場における権力は完全に夏生が握っていたのでどうしようもなかった。
「まぁ、なるようになるか」
今さらあれこれ心配しても仕方がない。プレゼント選びにも付き合ったし、時間的に夏生たちもこっちへ向かっているだろう。どうにかしようにも、もうどうにもならないのだから、天命を待つに限る。
そう結論付けた俺の前で、突然岡本が立ち止まった。
ドンッ、と岡本の背中に俺の肩がぶつかる。
「おい、急に立ち止まんなよ。危ないだろ」
「え、な、なんで……」
俺の注意が全く聞こえていないその反応と、岡本の視線の先に目をやったことで、立ち止まった理由がわかった。
「佳、くん……?」
呆然と立ち尽くす佐原さんと、心底驚いた表情の夏生が、そこにいた。
うそだろ、と思った。