どうやら禁忌の扉らしい。
 見られて困るものがあるのか、はたまたリビング同様、異常に荒れているのか。理由は分からないけれど、そこまで言われてしまうと気になる。


「散らかってるなら片付けますよ?」

「いい。散らかってない。死ぬほど片付いてる」


 それもそれで胡散臭い。まあでも、家主が駄目というなら素直に従うのが吉だ。
 分かりました、と大人しく頷いた私に、彼は話を変える。


「ああ、そうだ。お前の部屋はこっち」

「えっ」


 たった今、開かずの間と認定された部屋の向かい。廊下を挟んだそこが、私の部屋、らしい。
 まさか自分の空間を与えてもらえるとは思っていなかった。そもそも半年間だし、生活の端っこにお邪魔するくらいで十分なのに。

 先程とは打って変わってあっさりドアを開けた彼に促されて、私はその部屋に足を踏み入れた。


「え、あの……こんなちゃんとしたお部屋、いいんですか?」

「どうせ空いてたしな。好きに使ってくれ」


 彼の言う通り、そこは「空いていた」のだろう。
 クローゼット、ベッド、デスク。必要最小限の家具は置かれていたものの、殺風景で簡素な空間だった。


「あれ? そういえば……」