――公兎龍(こうとりゅう)、その瞳にて天命を見極め、世を選ぶ――

 花堯(かぎょう)の地に残る公兎伝承の一説である。
 かつてこの地には五つの国が存在していた。この伝承は国の垣根を越えて伝えられ、公兎の娘を妃として迎えた国が花堯を制すと信じられていた。

 公兎龍とは、宵闇を照らす月に住む神であるという。月神である公兎は自らの遣いとなる娘を選び、その娘は慧眼(けいがん)を持って世を統べるに相応しき者を選ぶ。選ばれし者は帝となって花堯の地を照らす太陽になるそうだ。

 公兎龍は本当に存在したのか。一つの記録を紐解こう。
 これは花堯の地が統一される前、五国(ごこく)戦乱(せんらん)の世に現れた最後の公兎(こうと)()の話である。
 虐げられることしか知らなかった彼女は公兎龍に選ばれ、彼女が選んだ者はこの地を平定し、平穏を作り上げた。

 最後の公兎妃――彼女の名は(えん)月娥(げつが)

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