2月12日。珊瑚は買い求めたチョコレートを前に悩んでいた。

二人がチョコレートをもらうことをあまり喜んでないみたいだったから、おやつ感覚のチロルチョコを選んだ。これなら廃棄するにも躊躇わなくて良いだろうという判断だ。珊瑚はチョコを三つラッピング袋に入れて、メッセージカードを取り出した。だけどそこから作業が進まない。

……なんてメッセージを書けばいいのだろう? 岸田はお付き合いしてるからこそチョコが欲しいと言っていた。お付き合い+チョコ=愛の告白、だ。推し相手にそんなこと出来る!? 否、出来ない。そう思うと、メッセージカードを添えるのを躊躇ってしまう。

(これからも仲良くしてください、とか……?)

岸田に伝える言葉としては妥当だと思うけれど、山内に対してはどうだろう。

(でも、山内くんにもメッセージ付けたいわ……)

クールでイケメン、という表面上の事しか知らなかった珊瑚が、山内に会うごとに知った、サッカーに対する真摯さと珊瑚に対して時折みせるやさしさ。

(……無理だ……。余計に書けない……)

脳裏にやさしい山内が思い浮かぶにつれ、珊瑚は山内宛のメッセージカードを書く手が止まる。珊瑚はカードを諦めた。チョコを渡せるだけでも良いと思った。