水族館デートを終えて、駅で二人と別れる。帰りの電車に揺られていると、スマホにラインの着信があった。見ると、グループラインの通知と山内から個人的にメッセージが来ていた。

岸田と山内とは一緒にお付き合いすることになった時に、グループラインを組んだ。それ以来、連絡はいつも岸田から来ており、珊瑚と山内はそれに返事をするだけだった。それが山内個人から?

何だろうと思って画面を開くと、そこには珊瑚を気遣うメッセージが。

――『日曜までお疲れ。風邪ひかないように帰れよ』

たった、それだけ。

グループラインの方には岸田が「また明日、学校でね~」というメッセージを寄越してきていて、山内はそれに「おう」と応えている。それとは別に、珊瑚にメッセージをくれたのだ。……多分、マフラーを貸してくれた時と同じ気持ちで。

その、控えめな行動がとても受け止めやすい。岸田の好意はおおっぴらでアクティブで、珊瑚をたじたじと尻込みさせる。決して嫌いとか言うことではないのだが(だって推しだし)、珊瑚は地味な学生だったため、恋愛偏差値もとことん低い。そんなところへ岸田のアプローチをまともに受け答えすることは難しかった。

山内に、ありがとう、と送ってそれから、追加でメッセージを送った。

――「マフラーありがとうございました。あたたかかったです」

どんな顔してこのメッセージを読むのかな。きっと仏頂面のまま、読むんだろうな。それでも嬉しいと思った。