すると、先生は、とても爽やかな満面の笑みで、
「そう言ってくれるのを待ってた」
 と握手してきたのだった。

 男子もトーナメントを勝ち進んだものの、準々決勝で敗退となった。閉会式までは時間があり、私たちは二階のベンチから勝ち上がったチームの試合を見学する。
 途中、トイレに行った私は、戻る途中で自動販売機に寄った。すると、ちょうど政本君がいて、
「あ、荘原。ちょうどよかった」
 と声をかけられる。
「今、ちょっとだけいいか?」
「え? うん、いいけど」
 体育館のロビーの奥には、多目的ホールへと続く通路がある。そこへ連れられて、ひとつめの角を曲がった私は、急に立ち止まった政本君に、
「どうしたの?」
 と尋ねた。
「えーっと……まず、おつかれ」
「うん、政本君こそ、おつかれさま」
 政本君は、鼻頭をかいて「うん」と言うと、手を腰においてしばらく斜め上を見る。変だな、と思って私がまた尋ねようとすると、ふいに正面へ顔を戻される。そして、政本君は深呼吸するように息を大きく吸って、
「荘原のことが好き」
 と言った。
……え?
「なんだと……思う」
 驚いた私は、目を丸くしたままで何も言葉が出てこない。
 政本君が、私のことを……好き?
 信じられない。ちょっと歯切れの悪い告白だったし、もしかしたら嘘なのではないかと疑ってしまう。けれど、耳まで赤くなっているところを見ると本気っぽくて、茶化すことなどできない。
「なんていうか……目で追ってしまったり、無性に心配してしまったり……。だから、あれ? 俺、好きなのかなって思って」
「…………」
「それに、ずっとマネージャーとして陰で支えてくれてたところも見てきたし、いい子だなって、もともと思ってたし」
「…………」
「九条先輩と付き合ってない、ってわかったときも、ちょっとホッとしたんだ。あと、バス停でふたりで話をしたときも、楽しかった」
 政本君は、照れながらも正直に話してくれた。それが伝染したかのように、私も恥ずかしくなってくる。
体育館のほうから、まだ続いている試合の音や声が響いてくる。ロビーからだろうか、誰かの話し声や、遠ざかっていく足音も。でも、ここだけとても静かで、唾を飲みこむことすらためらわれる。
 少し前の私なら、舞い上がっていただろうか。それとも、根津さんのことを思い出して、ためらっただろうか。