……ったー、と声を出すより前に、
「ナイス! 荘原さん」
「先輩、すごい!」
 根津さんや1年生たちが私にハイタッチをしてきた。そして、喜びをかみしめる余裕もなく、そのまま目まぐるしく試合が続く。
 やった……やったー……。
 私は、走りながら心の中で呟く。そして、
「……入った」
 と小さく声に出すと同時に、微笑みがこぼれた。
 試合で点を入れるって、こんなに嬉しいんだ。みんなが一緒に喜んでくれるって、こんなに嬉しいんだ。
 べつに、マネージャーであることで疎外感を感じていたわけじゃないけれど、こんなに部の一員として認められたような気持ちになったことはない。ここまでの一体感を感じたこともなかった。
 楽しい。
 ひとつのボールを追いかけて取り合って小さな輪っかに入れるこのスポーツを、私は、今、心からそう思えたような気がした。
 その1回戦突破。その勝利をみんなでジャンプしながら喜び合う。それは、私にとって、正真正銘の初勝利だった。

第2回戦は、私たちと5分5分のレベルのチームだった。この調子で、最後まで頑張ろう。そう思えていたはずだったけれど、徐々に疲労が表れてくる。
「諦めないよー」
「最後まで攻めよう」
 北見さんと根津さんの声がよく出ている。それに励まされて、私もきつくなってきた体をなんとか動かす。
 そもそも1年のときからずっとバスケを続けてきた彼女たちとは、基礎体力が全然違う。周りをよく見て動くことも、相手の動きを予測してフェイントをすることも、シュートの確実性も雲泥の差だ。
 それでも、回ってきたパスを、なんとか仲間でつないで1点でも多く点を獲りたい。チームの勝利に貢献したい。その一心で足を動かす。
 ここ1年で……ううん、生まれてきてから今までに、こんなに息を切らしたことがあっただろうか。こんなに汗をかいたことがあっただろうか。
体育の授業も運動会も体育祭もクラスマッチも、ずっと本気を出せずに、いや、本気を出さずにやり過ぎてきた。団体競技なんてなおさら、自分の弱さを理由に断り続けてきた。
 今日、私はそれを克服するんだ。この試合を勝ち上がって。
 ラスト1分を切り、2点のリードを許している今、みんなが最後の力を振り絞り、逆転を狙う。確実にシュートを決めてもらうために、得点力のある根津さんにボールを集める。けれど……。
「荘原さん! お願い!」