前回と同じ状況に、ツキンとまた胸が痛む。好きな人に、他の人との仲を応援されるのって、こんなにキツイのか。自分の気持ちをはっきりと自覚したから、なおさら苦々しい。
「練習、大丈夫だった? 今、どっかキツくない?」
 政本君の質問に、心がキツいとはもちろん言えず、
「ううん、大丈夫だよ。ありがとう」
 と答える。
「政本君こそ、私のせいで、今日はマネージャー業務全部任せちゃってごめんね」
「いやいや。ていうか、来週から練習復帰するから、1日だけのマネージャーで申し訳ないんだけどね。でも、荘原の大変さがわかって、よかった」
 そう、来週はマネージャーがゼロになる。だから、みんなで助け合って自分たちで動こう、と藍川先生がみんなに言ってくれた。
「荘原は、来週の試合が終わったら、どうするの?」
「え?」
「またマネージャーに戻る予定?」
 そうだ。もし地区予選で敗退したとしても、7月に、引退試合というものがある。うちの引退試合はこの付近の高校5校で行う恒例の試合で、毎年白熱するのだ。
もし、それまでに新入部員を勧誘できたら、人数はぎりぎり足りる。そしたら、私がピンチヒッターで出る必要はなくなるんだ。
「あぁ……うん、たぶん」
「そっか。いや、俺、ちょっと荘原のこと心配してたんだよね。みんなに気を使って無理してるんじゃないかって。ほら、荘原って、お人好しじゃん? 優しすぎるっていうか、空気を読みすぎるっていうかさ」
「……ハハ」
「本当は、前回のこともあるから、今度の試合も、それに向けての練習も、大丈夫かなって心配してるんだけど」
 政本君が、私をじっと見つめてきた。私のことを本当に案じてくれているような顔だ。
「ありがとう。無理はしないから大丈夫だよ」
 そう言いながら、私はまた、今までに幾度となくかけられてきた声、“心配”や“大丈夫?”や“無理しないで”を思い出していた。そして、九条先輩は、あまりそういう類の言葉を言わないな、とぼんやりと思った。
 しばらく世間話をしているとバスが来て、私はベンチから腰を上げる。九条先輩は、結局前回同様、コンビニから戻ってはこなかった。
「それじゃ」
政本君に手を振って別れた私は、バスに乗りこみ、席に着く。すると、続いて乗ってきた女性から、
「あの」
と声をかけられた。驚いた私は、「……はい」とおそるおそる返事をする。