「え? あぁ……うん。だってマネージャーだし、頼んでなくて」
「えー、普通頼むでしょ。だって、先生の分もあって、今日見たら、九条先輩もつけてるしさ。マネージャーだけないっておかしいじゃん、立派な一員なのに」
「…………」
 そう言われればそうだけど、全然思い至らなかった。
 “立派な一員”……。嬉しいけど、あまり実感もわかないし。
「注文しないの?」
「ハハ……ただのピンチヒッターだし、私はいいかな」
「はーい! 試合します」
 話をしていると、S校の男の先生が大きな声で呼びかけ、男子たちがわらわらと集まっていく。そして、女子のほうは藍川先生が笛を鳴らして集めた。男子と女子分かれて、それぞれで練習試合を始めるのだ。
 すぐにコートの中に入らせられた。S高の女バスは、私たちの人数の倍だ。だから、ベンチにはあと5人スタンバイしている。そして、さっきよりもけたたましい笛の音で、いよいよゲームが始まった。
 ……あれ? S高の動きがいつもより……ぎこちない?
 始まってすぐに思ったのが、それだった。どちらかというと、私たちのチーム、とくに北見さんと根津さんの動きが明らかに速くて軽やかだ。
 あ……そっか。
 そして、すぐに思い至る。今ゲームに出ているS高の子たちは、1年生の新入部員たちと2年生がひとりかふたりなのだと。経験を積んだ3年生がいない分、うちのチームの方が有利だ。
 けれど、こちらも北見さんと根津さんを除けば、1年生と2年生と私。戦力としては、お互い五分五分というところだ。
「声出していこう!」
 北見さんが私たちを引っ張り、どんどん攻めていく。私にも何回かパスが回ってきて、得点力のある根津さんへとつないだ。思ったより自分が動けていて、これは九条先輩と土曜日に練習したからだと思った。
「いける! いけるよー!」
「荘原さん、今のフェイント、ナイス!」
 北見さんと根津さんが、私の背中を優しく叩き、次いで後輩たちにも発破をかけている。女子バスケは人数こそ少ないけれど、このふたりのおかげでいい雰囲気を保ててきたんだと再確認した。
 点を取っては取られ、後半まで接戦が続く。ずっと走っているから息が切れてきて、みんな汗が滲みだしてきた。
 まだ……できる。
 そんな自信のようなものを感じていた私は、ディフェンスに徹し、パスを受けては仲間につなぐ。