でも、いよいよ本当に自分が5人のうちのひとりとして試合に出るのだと思うと、どうしても尻込みしてしまう自分がいる。……怖いのだ。
 だけど……。
「…………」
 女子たちの顔を見ると、期待に満ちた顔をしている。私が頷いてみんなで大喜びをする準備をしているかのようだ。先生まで、そういうふうに目に映った。
 この空気が、私の口を無理やり開かせる。
「……大丈夫だと思います。わかりました」
 すると、予想どおり、
「やったー!」
「よっしゃ! 荘原マネ、愛してる」
「先輩、ありがとうございます!」
 そんな言葉が私に浴びせられた。
「……大丈夫なの? 無理はしないでね、ホントに」
 先生だけが背中をポンと優しく叩いて、心配している声かけをしてくる。けれど、
「キツくなったら、パスすることだけに集中します」
 と冗談を返した。
 けれど、すでに動悸が激しい。胸の内では、大丈夫だろうか、という自問自答が充満していた。私は、冷たい手でポケットにいつも入れているハリッチを探す。
「……え?」
 けれど、そこにあるべきものがない。というより、今日ポケットに入れた覚えもなければ、ここ数日、それを見た覚えも触った覚えもなかった。
 ……あれ? いつから? いつからないの?
 私は盛り上がるみんなの傍らで、ジャージ上下のすべてのポケットを探る。それに気付いた根津さんが、
「どうしたの?」
 と声をかけてくる。
「あー……ううん。ただ、えーとお守り? がなくて」
「あぁ! あのハリネズミの……ハリッチちゃん?」
「そう。どこかで見なかった?」
「見てないなー。あったらすぐ届けるね。それより、荘原さん、本当にありがとう。無理していっぱい動かなくてもいいからね」
「ハハ……うん。足を引っ張ると思うけど、よろしく」
 冷静を装って話しながら、私は全身心臓になったかのように動揺していた。
 ない……ない……。家に置いてきた? それとも、教室? ううん、基本バッグに入れてるか、ジャージに移すかしかしないから……やっぱりバッグ?
 女子たちも帰り支度を終えて帰っていき、他の部活の人たちもいなくなった。あとをお願いされ、私だけが最後まで残る。
「ない……」
 バッグの中も部室も制服とジャージのポケットも隅々まで探した私は、体育館倉庫の中でハリネズミを探していた。
「なんで……?」