みんなは大きな声を体育館にとどろかせ、頭を押さえたり口を押さえたりしている。私も、開いた口が塞がらなかった。
「ここ数日部活を休みがちだったけど、そこまで心配してなかったから、私も驚いたよ。ちなみに、明日陸上の大会もあるらしくて」
「じゃあ、明日の練習試合も、2週間後の地区予選も……」
 先生の説明に、北見さんが尋ねる。
「うん、無理だね」
「えー……」
「せっかく人数の問題クリアできたのにー……」
 根津さんも視線を落とす。彼女を引き入れてくれた1年生も、バツが悪そうな顔をしている。
「あっ!」
 けれど、なにかを思いついたらしい北見さんが、パンッと手を打って口を開く。
「荘原マネ、バスケできるじゃん!」
 その言葉に、根津さんがハッとした顔をして、その他の女子はポカンとする。私は、
「え……」
 と、一気に集まった視線にたじろいだ。
「そうだね! だって、九条先輩とバスケデートしてたし」
 根津さんの言葉に、私と九条先輩の関係を知らなかったらしい1年生が、「え? え?」と違う興味の顔になった。
「私たち見てたんですけど、けっこう上手だったし、ルールももちろん熟知してるわけだから、適任だと思うんだけど」
「うんうん、とりあえず明日の練習試合から一緒にコート入ってさ」
 ふたりでどんどん話を進めていく北見さんと根津さんに、藍川先生が、
「いやいや、でも本人に確認しないと。荘原さんは、キミたちみたいに体が丈夫なわけじゃないんだから」
 と、事情を知っているからこそ間に入ってくれる。
「あー……そうだったよね。だから、いつもクラスマッチとか休んでるし」
「でも、九条先輩とバスケしてたとき、かなり動けてたし、長くやれてたように見えたんだけどな」
 悪気がないふたりが、そんな相談をしながらこちらを見る。私は、先生に視線を送った。けれど、先生も“荘原さんに判断は任せるよ”的な目をして、腕組みしながら頷いている。
「あ……」
 自信の無さが、私の体を冷やしていく。けれど、それ以上にこの空気が重たくなっていくのが嫌で、生唾を飲んだ。
 一度、出てもいいかな、出るしかないな、くらいの気持ちにまでなったんだ。1年生の仮入部生が入ってこなければ、そうする予定ではあった。