お母さんには、運動をしていることをまだ言えていなかった。心配させたくない気持ちが半分、高校入学前に無理はしないと約束したことを裏切ってしまっているような気持ちが半分、そして、九条先輩という男の人とふたりきりだということを内緒にしておきたい気持ちも、わずかながらあった。
「こんにちは」
総合体育館は、バスで15分の場所にあった。1時ちょっと前に着いたけれど、先輩は前回同様すでに着いていて、体育館内のロビーで缶コーヒーを飲んでいた。
「どーも」
前回はジャージだったけれど、今日の先輩はジーンズにポロシャツだ。聞くと、夕方から友達と遊ぶ約束をしているらしい。そういえば先輩は大学生なんだったな、と当たり前のことを思い出し、こうして私の練習に付き合ってもらっているのが不思議に思える。
「よし、じゃあ始めるか」
「はい」
私は先輩の大きな背中の後を追い、体育館内に入った。今日は、前回バレーをしていたおばさんたちもおらず、貸し切り状態だ。広い館内にふたり分のバッシュの音が響き、その特別感と先輩のいつもと違う雰囲気に、浮足立っている自分を感じた。
今日も、前回と同じように1対1をやったり、ドリブル練習やパスを受け取ってシュートをする練習をしたりした。先輩と一緒にやっていると、どれだけ息が上がっても発作のようにはならない。それが嬉しくて、休む時間も惜しんで練習をした。
「おい、さすがにちょっと休もう」
「だって、先輩全然疲れてないじゃないですか」
「俺は手加減しまくってるからいいとして、お前の“体弱いので”はどこにいったんだ?」
気付けば私は汗だくで、息も上がり、頬も上気していた。先週以上に動いているし、動けてもいたからだ。
「ほら、もう水筒空じゃん」
そう言って、スポーツドリンクを2本持ってきていたらしい先輩から1本手渡される。お礼を言ってそれを喉に流しこむと、水筒の麦茶とは違って、すーっと体に沁みわたっていくのがわかった。
「これでわかった。澪佳はやっぱり大丈夫だよ、試合に出ても」
「そうですかね……後藤さんはけっこう点を獲るタイプだし、その代わりが務まるかどうか」
「だから、誰も代わりとして活躍してもらおうと思ってないから。ピンチヒッターとして試合当日人数合わせで出る分には、そんなに気負わなくても大丈夫だろ? 今みたいに動けてたら十分」
「……まぁ」
「こんにちは」
総合体育館は、バスで15分の場所にあった。1時ちょっと前に着いたけれど、先輩は前回同様すでに着いていて、体育館内のロビーで缶コーヒーを飲んでいた。
「どーも」
前回はジャージだったけれど、今日の先輩はジーンズにポロシャツだ。聞くと、夕方から友達と遊ぶ約束をしているらしい。そういえば先輩は大学生なんだったな、と当たり前のことを思い出し、こうして私の練習に付き合ってもらっているのが不思議に思える。
「よし、じゃあ始めるか」
「はい」
私は先輩の大きな背中の後を追い、体育館内に入った。今日は、前回バレーをしていたおばさんたちもおらず、貸し切り状態だ。広い館内にふたり分のバッシュの音が響き、その特別感と先輩のいつもと違う雰囲気に、浮足立っている自分を感じた。
今日も、前回と同じように1対1をやったり、ドリブル練習やパスを受け取ってシュートをする練習をしたりした。先輩と一緒にやっていると、どれだけ息が上がっても発作のようにはならない。それが嬉しくて、休む時間も惜しんで練習をした。
「おい、さすがにちょっと休もう」
「だって、先輩全然疲れてないじゃないですか」
「俺は手加減しまくってるからいいとして、お前の“体弱いので”はどこにいったんだ?」
気付けば私は汗だくで、息も上がり、頬も上気していた。先週以上に動いているし、動けてもいたからだ。
「ほら、もう水筒空じゃん」
そう言って、スポーツドリンクを2本持ってきていたらしい先輩から1本手渡される。お礼を言ってそれを喉に流しこむと、水筒の麦茶とは違って、すーっと体に沁みわたっていくのがわかった。
「これでわかった。澪佳はやっぱり大丈夫だよ、試合に出ても」
「そうですかね……後藤さんはけっこう点を獲るタイプだし、その代わりが務まるかどうか」
「だから、誰も代わりとして活躍してもらおうと思ってないから。ピンチヒッターとして試合当日人数合わせで出る分には、そんなに気負わなくても大丈夫だろ? 今みたいに動けてたら十分」
「……まぁ」