「そうだったんだね」

ポツリと言葉を落としたあと、

「七海、一人でずっと苦しい思いしてたんだね」

先輩の言葉に感情が込み上げてきて、私は思わず唇を噛んだ。
だって、人前で泣きたくなかったから。

けれど、


「七海」

私の名前を呼んで、私の肩を引き寄せる。
ぶつかった身体から温もりが伝わってきて、

「よく頑張ったね。偉かった」

私の頭にコツンと頭を預けると、優しく撫でる手のひら。

そして、

「七海、ずっと今まで一人でつらかったよね。苦しかったよね。そんなつらいこと話させてごめんね」

私を心配する先輩の声が隣から聞こえる。それさえも私の感情を煽って、涙がじわっと溢れてくる。


「でも」言いかけて、やめた先輩の手のひらも、声に反応してピタリと立ち止まると、

「俺を頼ってくれてありがとう」

今にも泣き出してしまいそうな声色で先輩は言った。

そしてまた、優しく撫でる手のひら。

どんな顔をして、どんな気持ちで、言葉を言っているのか、何も分からなかったけれど、先輩も私と同じように傷ついているような声だった気がした。

それにリンクして、私の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちた──。