「だから妹なんですけどふつうの家族とはちょっと違ってそのへん複雑というか…」
「…そうだったんだ」先輩は気まずそうに開いていた口を閉じて、膝の上で両手を結んだ。
美織ちゃんのことは可愛いと思う。けれど、正反対のときもあって。
だって、愛と憎しみは紙一重と言われているくらいだから。
「壊れたブレスレットを見て私、カッとなっちゃって怒ったんです。それに驚いた妹は泣いてしまって。妹の泣き声に気づいたお父さんが来たんです」
ここまで言えば話の流れは見えたかな、なんて思いながら
「それでお父さんと口論みたいになって、家を飛び出したんです」
言い終えると、胸が苦しくて、ふと空を見上げて、たくさん息を吸った。
「お父さんになんて言ったの?」
声が聞こえて、目線を下げながら
「みんないらないって。みんな大嫌いだって……言っちゃって…」
眉尻を下げて落ち込む先輩の視線とぶつかった。
「だってほんとに嫌いなの……」
ぎゅっと拳を握りしめて、
「私ばかりが苦しくて、私ばかりがどうしてこんなに不公平なんだろうって……」
「不公平?」
「だってそうじゃないですか。私、何も悪いことしてないのに私ばかりが苦しいんです。お母さんが亡くなったのだってそうだし、大切なブレスレット壊されたり友人と喧嘩してしまったり……」
苛立った感情は、言葉をまくし立てる。
「私ばかりが不幸の連続で……」
みんなは何も知らずに楽しそうに笑っていて、そんな姿を見るのが私は苦しくてたまらなかった。
「……これ以上もう耐えられなくて」
視界が滲んだ。だから私は、顔に両手を押し付けた。
生きる気力さえ減っていた。
だってもう、私を包み込んでくれるお母さんはいないのだから。