「教室どう?」
言ったあとに、パンをかじる先輩は意識だけを私の方へ向ける。
なんの躊躇いもなく大きな口を開けてパンをかじる姿。
今日も購買のパンで、しかもあんバターロールらしい。
そしてもう一つ入っているであろう袋が、わずかに膨らんで見えた。
お箸を止めた私。
「友情ってあっけないものですね」
先輩へと投げるとパンをかじろうと大きな口を開けていたけれど、
「どうしてそう思う?」
パンを下げて、そんなことを尋ねられる。
「あ、えと」
言葉を準備していなくて焦る私に、
「ゆっくりでいいよ」
優しい声が流れ込んできて、私は一度、ふう、と息を吐いた。
そしたら準備が整ったようで、
「一年以上一緒に過ごしていたのに、終わるときってこんなにあっけないんですかね」
ひどく苦しんでいるはずなのに私の口からは淡々とした言葉が溢れてくる。
「絶交でもされた?」
「どう…なんですかね」
分からなくて、苦笑いをする。
けれど、二人が私を避ける姿を見れば答えなんて一目瞭然な気がした。
「私があんなこと言わないで我慢していたら、今も変わらない毎日を過ごしていたんでしょうか」
「あんなことって?」
「えっと、それは…」
答えられずにいると、
「そんなこと言うってことは七海、ほんとは仲直りしたいの?」
尋ねられて、え、と声をもらす。
私が友人と仲直り? ……どうなんだろう。私、仲直りしたいのかな。
でもそれならどうして今も一人で行動しているんだろう。
ほんとに仲直りしたいならすでに行動に移していてもおかしくないのに。
──それは、なぜ?
屋上へと続くドアに風が吹きつけて、ガタガタと音を立てる。
それ以外、何も音は聞こえない。
ただ私の身体の中から聞こえる声が一つあって、それを口にする。
「それは、ちょっと違うかもしれません」
「どうして?」