「美織は早苗のごはんがほんとに大好きだなぁ」
「うんっ、だいすき!」


それを聞いた早苗さんは、ふふふっと口元を緩めた。


「それはよかったわ。まだたくさんあるからゆっくり食べなさい」
「はぁい!」


元気な返事をした美織ちゃんは、おいしそうにカレーを頬張った。

そんな美織ちゃんを見てお父さんも、早苗さんも笑っている。
家族団欒の光景がまた目の前に広がり、私の胸はズキズキと痛みだす。
幸せの形を見ていると、私の心はそれを拒絶するかのように真っ黒に染まり出す。


私だけが部外者に見えてならない。
私だけが除外されているような。
私はここにいてもいいのだろうかと不安になる。


「七海、手が止まってるがどうかしたか?」


お父さんの声が聞こえて、パチンっと意識が引き戻されると、早苗さんまでも私を見ていた。


「あ……ううん、何でもない」

言ったあと、目を伏せてカレーを食べた。

そうか、と言うと特に怪しまれることなく、お父さんも何事もなかったようにカレーを食べた。
そしておいしいおいしい、と顔を緩ませた。
早苗さんだけがまだ私を見ているような視線を感じた。
けれど私はそれに気づかないフリをする。

だって今、目が合ってしまえばきっと私笑える自信がない。
うまく笑顔を貼り付けられない。


「美織、危ないから左手も出して」


早苗さんが注意をして、はぁい! と美織ちゃんの返事が聞こえる。
わずかに顔を上げた私の視界に映り込んだ美織ちゃんの左手。

──その瞬間、ドクンっと嫌な音が弾けた。

美織ちゃんの左手でキラキラ光る、世界に一つだけのブレスレット。
私はそこから目が離せなくなる。


それは私が大切にしていたもの。
私が七年前からずっと肌身離さず持ち歩いていたもの。
それが今は美織ちゃんのものになっている事実が、私の心をひどく傷つける。

下唇を強く噛んで、感情を抑え込む。