◇
「あの、七海」
お昼休みになり友人二人に声をかけられて、顔をあげると、
「うちら今日別で食べるね」
ぎこちない声に、合わない目線。
「……あー、うん……」
仕方ない、そう思って返事をすると、じゃあそういうことで、と言葉を綴ると、足早に教室を出た二人。
まるでその足音は私から早く逃げるためのような音に聞こえて、ズキッと痛んだ。
一度切れてしまった糸はもう繋ぎ直すことは不可能らしい。
分かってはいたことだけど、さすがの私もへこみそうだ……。
それにクラスメイトも私を見て見ぬフリで誰も声をかけようとはしない。
さっきのあのやりとりを間近で見物してしたのだから。
ははっ、と心の中で笑ったけれど、ただただ虚しくなるだけで、全然楽しくなんかない。
代わりに心がキリキリとすり減るだけだ。
「…ッ」
教室は息が詰まりそう。
空気が薄いのかな。
それとも呼吸ができてないのかな。
私は息の仕方すら忘れてしまったのだろうか。
今まで私は一人になることを恐れていた。
けれど、これでよかったのかもしれない。
だってもう、いい子を演じる必要はなくなったのだから。
猫を被ることをしなくていい。
誰かの顔色を伺って、息苦しい毎日を過ごすことをしなくていいんだ。
──でも、やっぱり“孤独”に慣れているわけではなかった。
だから私は、お弁当箱とスマホだけを持って、教室を飛び出した。