「いくつなの?」
「……三歳、だけど…」
すると、それに驚いた二人は、えー、と声をあげて、
「三歳なの!?」
「かなり歳離れてるねえ!」
と過剰に反応した。
そのせいでクラスメイトは一瞬私たちの方へ視線を向ける。
けれど、何事もないと分かるとすぐにその視線からは解放される。
いらいら、キリキリ、蠢(うごめ)く感情。
「なんで歳離れてるの?」
一人が言えば、ねえなんで、と言葉を続ける。
二人はまるで三歳児のように、なんで、どうしてと質問ばかりする。
自分たちの疑問だけを解決して満足したいのかな。
気を使うという言葉が二人の頭の中の辞書には載っていないのだろうか。
「ねえ七海、聞いてる?」
尋ねられるたびに、ぎゅっと拳を握りしめた。
なんで、なんで、と頭に残る。
まるでほんとに三歳児。
美織ちゃんとの会話が頭に浮かぶ。
『やだぁ! これみおりのなの!』
そう遠くない記憶が頭の中でリピートされて、ゆらゆら揺れる心。ズキズキ痛む頭。
胸の奥は無数の針で刺されているようで。
「……そんなの関係ないでしょ……」
ポツリと声をもらすが、聞き取ることができなかった二人は、
「え、なに? 聞こえない」
「なんて言ったの?」
なんでなんでと責め立てる。
悪気のない、その瞳。
だからこそ逆に腹立たしくて、二人の表情を見た瞬間、私の何かがプチンッと音をたてて切れた。
「私にだって話したくないことはたくさんあるの……っ!」
バンッ──、
机を叩いて立ち上がった私に、一斉にクラスメイトがこっちを向いた。
さっきまで話し声で溢れ返っていたのに、しーんと静まり返る教室。
ハッとしたときにはすでに遅かった。
クラスメイトも、目の前に座っている二人も私の声に驚いて目を見開いていた。