「埋め合わせ?」
言いながら疑うような目で私を見つめる二人に、頷いてみせると、二人は一度顔を見合わせたあと、どちらかともなくハアーとため息をついたあと
「今回だけだからね」
「次は絶対だよ」
と私に釘を刺したのだ。
私は藁にもすがる思いで、首を縦に振った。
今度埋め合わせするから、なんて自分で言ってみたはいいけれど果たしてその約束は果たせるのかな。
だって私、迎えを頼まれることはしょっちゅうあるもんなあ……
「そういえばさー」
声がして意識を目の前へ向けると、
「七海の妹って今いくつなの?」
流れる水のように会話はさらさらと変化してゆく。
そのせいで一瞬反応するのに遅れてしまう。
それを聞いていないと勘違いしたのか、なーなーみー、と耳元で声をかけられる。
今尋ねられた問いが、頭の中をリピートする。
「な、なんで?」
「いやぁ、いくつなのか気になって」
「そうそう。七海のそういうの聞いたことないからさー」
まるで今日のごはんなに? と同じ口調で聞かれる。
家庭の事情なんて人それぞれだ。
べつに二人が悪いと言っているわけじゃない。
家庭の事情を教えていない私にも多少の原因はあるだろう。
けれど、聞いたことないからってそんな軽い口調で聞いてこないでほしい。
「ねえ、七海?」
口をつぐんでいると、声をかけられる。
私は今、笑っているだろうか。
ちゃんと口角を上げているだろうか。
歯を噛みしめる音がわずかにした気がした。