「なんで…あれは私の一番大切なブレスレットなのに…」
美織ちゃんにぶつけることのできなかった感情。
あのとき我慢した感情が一気に紐解かれると、次から次へと溢れてくる。
私は、いい子だから。
私は、お姉ちゃんだから。
自分の感情を押し殺さなければならない。
いつも優しくなければいけない。
いやだ、と思っていてもいいよ、と笑う。
大丈夫じゃなくても、大丈夫だよ、と笑って誤魔化す。
それがどれだけ苦しいものかみんな知らない。
私がどれだけ我慢をしているのか、みんな何も知らない。
今までいい子を頑張ってこれたのは、あのブレスレットのおかげでもある。
それなのにおまもりを失ってしまった今、私はいい子を演じる自信がなかった。
けれど、いい子を演じなければならない。
私はお姉ちゃんだから。
周りに迷惑をかけてはいけないから。
強がってみせるけど、心はずたずた。
この六畳しかない狭い部屋の中は、私の苦しみと悲しみでいっぱいだった。
「……もう、苦しい…っ」
吐き出した思いは、この小さな箱の中にずっと残ったまま。
あお先輩と連絡していたことさえも忘れてしまうほどに、私は疲弊していた。
ブレスレットのことしか頭になかった。
苦しみと悲しみと、つらさ。
ズキズキと私の心を突き刺していく。
大切な大切なものをとられてしまった私は、溢れ出す涙を止めることはできなかった──。