SNSに投稿することはほとんどなくなって、その代わりあお先輩と会ったその日から、二日に一回のペースでSNSではなくメッセージでやりとりをするのが日課になった。


『今日もまたいい子を演じてたの?』

『よく分かりますね』

『七海のことだから無理してるんじゃないかなぁと思って』


たった数回しかSNSでやりとりしてなかったし、会ったのだってこの前が初めてだったのに、まるで私のことがお見通しだと言ったあお先輩。


『学校ではいい子でいた方が何かと便利なので』

『それじゃあ七海の気持ちはどうなるんだよ。ずっと無理して苦しいでしょ』


いい子を演じている私のことを知っているのはあお先輩だけ。
先輩とメッセージをしている時間だけが、唯一自分の心を打ち明けることができた。
ちゃんと息を吸うことができている気がした。


『あお先輩だけがいい子じゃない私を知ってくれてる。それだけで十分です』

『十分なんて言わずにもっと俺のこと頼ってよ』


あの見た目でこんなことを惜しげもなく言ってしまうあお先輩は、ほんとキザな人だと思った。
べつに直接言われているわけじゃない。
メッセージで送られてくるただの文字なのに、頭の中であお先輩の声で再生される。
男の人の低くて、特有のある声。
けれどそこに優しさが含まれているような。


『どこでそんなセリフ覚えてくるんですか』


赤面してしまった私は、それには直接答えることができずに言葉をはぐらかしてしまう。
ベッドにスマホを投げると、手でパタパタと頬を仰ぎ、サイドテーブルの上に置いてあるミネラルウォータを飲んだ。

──あっ、そうだ。
そういえば明日授業が交代になるんだったっけ。
間違えないように今のうちに教科書入れ替えとかないと……