隣でアイスコーヒーを飲む、あお先輩の横顔を見つめる。
ゴクリと飲むたびに喉仏が上下に揺れて、男の人であることを自覚させられる。
初対面のはずなのに初対面の気がしない。
学校のどこかですれ違っていたとか?


「なに?」

ふいに、私の方を向いた先輩の瞳とぶつかった。
パチッと猫だましをされたみたいに、ハッとした私は、途端に慌てる。


「ななな、なんでもありません!」


じーっと見つめていた自分が恥ずかしくなり、目を逸らして窓の外へ視線を向けた。
ふうん、とあお先輩は、それほど気にしている様子はなくてホッとした。

もうちょっと見るにしてもバレないように見なよ! ああもうっ、恥ずかしい……と心の中で盛大に反省をしていると

「──あ、そうだ」
と突然声を上げる先輩。
なんだろう、そう思って意識だけをあお先輩の方へ向ける。


「連絡先交換しない?」


その声に驚いた私は、視線全てを先輩へ向けて瞬きを繰り返す。
すると、私が理解していないと思ったのか、あお先輩が、だから連絡先、ともう一度呟いた。


「……え、なんで、ですか?」


連絡先? それってSNSのやりとりじゃなくて普段使ってるメールとかってこと?
でもべつに今までだって不自由なく連絡できていたわけだし交換する必要ないんじゃ……

一人勝手に納得しようとしていると、

「リアルタイムで通じないと意味ないでしょ」
と、呆れたように眉尻を下げた。


リアルタイム? 通じないと?
いや、全然意味が分からないんですけど。
もっと説明を追加してほしい……!


「えーっと、あのー……?」

言いながら、首を傾げると

「七海がほんとにつらいときにすぐに駆けつけてあげられないだろ、ってこと」
と言葉を付け足してくれた。


ああ、なるほど! ……いやいやいや! なに、私は納得をしようとしているの!