「それよりいきなり会おうなんて言ってごめんね。顔も分からない人と会うって緊張したんじゃない?」
「それはまぁ……でも、最終的に会おうと決めたのは私自身ですし…」


言いながら、緊張してのどがカラカラになった私はアイスティーを一口飲んで口を潤す。


「でも会おうって言ったの俺だからさ」
「それは、そうかもしれませんが……」


言葉に詰まって口ごもる。
SNSで返信を打つときは持ち時間はたくさんあるのに、現実世界はそうはいかずにするすると時間が過ぎてゆき、
「だから不安にさせてごめんね」
と、あお先輩が謝った。

そりゃあもちろん緊張もしたし怖かった。
けれど、それと同じように私を見つけてくれた人はどんな人なのかなって気になったんだ。


「あお先輩、謝らないでください。私、先輩と会えるのを少なからず楽しみにしていましたから」


本音半分、嘘半分。
いい子の私は、その場の空気を読み取る。
何回も何十回、何百回と今までに空気を読んできた私は、その瞬間何をどう言えばいいのか手にとるように理解できる。


「ほんとに?」

そう尋ねられて、私はゆっくりと頷いた。

そしたらよかったと、ふーっと安堵して椅子に深く背もたれたあお先輩。

初対面の人に完全に自分をさらけ出せるわけではない。
だからやっぱりみんなと同じようにいい子で接する。
けれど、その中にわずかに普段と違う自分がいるような気がしたんだ。

少し喋っただけで口が渇いて、のどがカラカラになっていたからまたアイスティーを流し込む。
冷たいそれがのどを潤し、回復した。


「それと今気づいたんだけど七海、俺のことあお先輩って呼ぶの?」
「え? あー、これが呼びやすいので……」


言ったあと不安になり、嫌ですか? と尋ねると、いやー、べつに好きに呼んでもらって構わないけど、と返事をもらいホッと安堵する。
ていうか今気づいたけど、先輩すでに私のこと呼び捨てだ。
それなのに嫌じゃないってなんでだろう。