「SNSのアカウント名がななだったから、てっきりそうなのかと思ってたけど、七海だったんだね」
「あ、はい。本名だとバレたときが嫌だったので"み"だけをとってななに……」


ふうん、と相槌を打つと、またアイスコーヒーを飲んだあお先輩。

よく考えてみれば、ななも七海もそんなに変わらないんだよなぁ。
でも、顔出しをしているわけでもないしプライベートを公にしているわけでもないから見つかることはないと踏んでいたけど。
まさか同じ学校の人とSNSで知り合うことになるなんて思ってもいなかった。


「私は、てっきり名前があおいなのかと思ってましたけど蒼山なんですね…」
「あー、まあふつーはそう思うよね」


それなのにまさかの蒼山の"あお"だけをとるとは想定外。
てっきり私は、宮原先生が一番濃厚だと思って疑っていたのに……
いや、春ヶ浜高校に"あお"がつく人なんてきっとたくさんいるし!

でも、あお先輩のフルネーム知れてた。
仮想空間じゃない、この現実世界で生きている"蒼山光流"先輩と繋がれた。
それがなぜか、嬉しく思った。


「で、でもなんで私のことさん付けで呼んでたんですか?」
「ん? あー、いきなり呼び捨てだと嫌がられるかなぁと思って。だからといってちゃん付けするのは俺が言い慣れてないからさ」
「文字を打つだけなのに、ですか…?」
「それでもなんか俺がちゃん付けって違和感しかないんだよね」


あお先輩こと蒼山先輩は、見た目は結構クールな感じに見える。
それなのに名前の呼び方一つを気にしてしまうところとか、SNSのアカウント名をあお先輩にしている部分とか、なんか見た目とは反して中身は意外とおちゃめな感じなのかな。
なんて全部私の憶測にすぎないのだけれど。