『直接、会ってみませんか?』


「……え?」

思いがけない提案に、私は声をもらす。


だってまだほんの数回しか連絡取ってないのに、いきなり会うなんて怖いというか。
あお先輩というだけでそれ以外は何も知らないし、もしかしたら三〇代、四〇代……いや、へたをすれば五〇代かもしれないってことだよね!?


『あお先輩がどういう人なのかまだよく分からないので、怖いというか……』


いい子じゃない私は行動力もなければ、勇気もない。
苦しいと思いながら自分の殻を破ることができないんだ。

ピコンッという音にビクッとして、掲げていたスマホが手からすり抜けて、バンッとおでこに落下した。


「……いててて……」


あお先輩のお誘いを遠ざけた報復なのだろうか、なんてことはさておいて、返信を確認する。


『じゃあ簡単に自己紹介します。性別は男で、春ヶ浜高校に通ってます。名前は会ったときに教えます』


えっ……!?
春ヶ浜高校って、私と同じじゃん。
それでいてあお先輩って、もう宮原先生しかあり得なくない?!
いやでも、通ってるって言ってるし……
あーでも、教師でもそう言うのは可能か。

てかこれ、私も言わなきゃダメなパターンだよね?


『私も同じ学校に通ってます』


打ち込んでみたけれど送信するか否や悩む。
べつにこれだけで私だとバレる確証はないけれど、七海の七を平仮名に変えて"なな"っていうアカウント名つけてるし……

いやでも、教えてもらったのに教えないのは人としてなしだもんね。
えーい、どうにでもなれ、そう思って投稿ボタンを押す。