「じゃー、また明日ね!」
「ばいばい、七海!」


二人に手を振り返すと、行こ行こ、とルンルンで廊下を走って行った。
窓から外を眺めると、校門まで駆けてゆく二人の姿が視界に入る。
私はそれを羨ましく思い、それと同時にふうーっと吐いたため息を空へと飛ばした。

空には雲が浮かんでいて、それが淡いオレンジ色に着色されて、まるでキャンパスのように空に大きな絵が描かれているようだった。


「あーあ。ほんっと私の人生ついてない…」


窓に手をついて、空を見上げながら、そんな独り言をポツリともらしてみるけれど、返事をくれる相手は誰もいない。
私の存在なんてあってないようなものだ。

いい子の仮面を剥いでしまえば、私はモブに成り下がる。
それとも仮面を剥げば私の姿なんて透明人間のように見えなくなってしまうのかな。


「……心の中からっぽだ」


誰かと一緒にいても、誰かと楽しくおしゃべりしていても、私は仮面を被っているから、楽しさは心の中に溜まっていかない。
ペットボトルの底に穴でも開いているかのように、そこからゆっくりと水は流れてゆく。
だから私がどんなに猫を被って頑張ったところで、本来の私の心が満たされることは絶対にないのだ。


今頃、あお先輩はどうしているのかな。
この広い空のどこにいるのかな。
何をして、何を思っているのかな。
少しでも私のことを考えてくれているのかな。
100パーセントのうちの、1パーセントでもいい。
私のこと考えてくれてる人が一人でもいたら、それが救いになる。
なんて思っても結局は、仮想空間のあお先輩だから言葉なんて文字でしか交わせない。


「……そうだ。私、まだあお先輩にフォローしかえしてないんだ」